若山哲夫容疑者(68)が運転するマイクロバスに乗っていた生徒が、事故直前に「きょう死ぬかも」という趣旨のメッセージを動画とともに家族に送っていたことが判明した。磐越道バス事故をめぐっては、違法な旅客輸送=白バス行為の疑いや、学校と蒲原鉄道の主張の食い違いも浮上している。
若山哲夫容疑者の運転に生徒が「死ぬかも」と家族へSOS送信
事故前から複数が危険を察知…ドラレコなし・動画が唯一の物証に
白バス行為・学校とバス会社の食い違い|磐越道バス事故福島県郡山市の磐越自動車道で高校生ら21人が死傷したバス事故で、若山哲夫容疑者(68)が運転するマイクロバスに乗っていた生徒が、事故直前に「きょう死ぬかも」という趣旨のメッセージを動画とともに家族に送っていたことが、捜査関係者への取材でわかった。違法な旅客輸送=白バス行為の疑いや、学校とバス会社の主張の食い違いも新たに浮上している。
若山哲夫容疑者とは?逮捕に至る経緯
若山哲夫容疑者は新潟県胎内市在住の無職、68歳。
2026年5月6日午前7時40分ごろ、磐越道上り線で北越高校(新潟市)の男子ソフトテニス部員20人を乗せたマイクロバスを運転中、道路脇のクッションドラムやガードレールに衝突。新潟市西区の男子高校生(17)を死亡させ、17人に重軽傷を負わせた疑いで、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の容疑で逮捕された。取り調べに対し若山容疑者は「速度の見極めが甘かった」「時速90〜100キロで走行し、カーブを曲がりきれなかった」と容疑を認めている。制限速度は80キロだった。また、事故前の数カ月間に複数回の事故を起こしていたことも判明しており、警察は速度超過以外に事故につながる要因がなかったかについても捜査を進めている。
「死ぬかも」生徒が事故直前に家族へ送ったメッセージと動画
捜査関係者への取材によると、乗車していた生徒の1人が、若山容疑者の運転に身の危険を感じ、事故直前の車内の様子をスマートフォンで動画撮影。その動画とともに保護者へ「きょう死ぬかも」などという趣旨のメッセージを送っていたという。また別の報道では、バスに乗車していた生徒が家族に「死ぬかもしれない」という趣旨のメッセージを送っていたことも警察への取材で明らかになっている。警察はこの動画を、衝突前の走行状況を裏付ける重要な物証とみて調べを進めている。
若山容疑者の運転の様子|複数の生徒が「荒かった」と証言
捜査関係者によると、若山容疑者は走行中、磐越道の進行方向左側にある外側線を度々踏んで走行。事故現場の直前にはトンネル内でバスの車体をこするなど、危険な走行をしていたとみられる。警察が事故後に生徒への聞き取りを行ったところ、複数の生徒が「事故前から運転は荒かった」と証言したという。事故現場には目立ったブレーキ痕やスリップ痕がなく、バスはスピードをほとんど落とさないまま衝突したとみられている。
白バス行為とは?今回の事故との関係
「白バス行為」とは、国土交通省の許可を受けていない一般車両が、バス会社のように対価を得て旅客を輸送する違法行為を指す。道路運送法で禁じられており、摘発されれば運転者だけでなく、依頼した側も罪に問われる可能性がある。今回の事故では、別のバス会社に勤務していた男性が、バスを手配した蒲原鉄道の営業担当の知人を通じて、北越高校のバスの運転依頼が数年前から複数回寄せられていたと証言。「何月何日なんだけど乗れねぇか」という連絡が携帯に届いていたという。警察は学校と会社の間で白バス行為が繰り返されていた疑いがあるとして、捜査を進めている。
「手当なし」vs「ボランティアではない」学校と蒲原鉄道の食い違い
事故をめぐっては、北越高校と蒲原鉄道の主張が真っ向から食い違っている。北越高校の灰野正宏校長は「学校から運転手を紹介して出してもらいたいとは伝えていない。そういった事実はない」と否定。学校側は運転手の手配や金銭の授受についても関与を否定している。一方、蒲原鉄道の茂野一弘社長は「ボランティアということは私から言った話ではない」「営業している中でお手伝いをしていた一つだと認識している」と述べつつも、金銭の受け取りについては「いまのところはまだ(受け取りはないと)考えている」と発言。責任の所在をめぐって、両者の説明には依然として大きな隔たりがある。
ドライブレコーダーなし|生徒の動画が捜査の鍵に
今回のマイクロバスには、車内外を撮影するドライブレコーダーが搭載されていなかった。そのため、警察は生徒が撮影した動画や乗客の証言を軸に捜査を進めているとみられる。生徒が撮影した動画には、事故現場に至るまでの走行状況が収められているとされており、事故当時の速度や走行状態を客観的に裏付ける唯一の映像記録となる可能性がある。
亡くなった稲垣さんはどんな人物だったか
今回の事故で亡くなったのは、北越高校に通う新潟市西区の男子高校生・稲垣さん(17)。県内屈指の強豪として知られる同校ソフトテニス部に所属し、インターハイ予選を前に、練習試合のため福島県へ向かう途中だった。部の先輩は「友達も多く、周りのみんなから愛されていた。どうやったらできるようになるのか、誰よりもよく質問しにきてくれた」と振り返っている。稲垣さんの家族は事故翌日にコメントを発表し、「大切な存在である息子を今回の思いがけない出来事で失い、深い悲しみの中におります。この状況をまだ受け止めきれずにおります」と心境を明かした。